ハムスターの
環境エンリッチメント
≪このページの要約≫
- §1.環境エンリッチメントとは?
- §2.ハムスターにも環境エンリッチメント
- §3.環境エンリッチメント以前の飼育環境の問題点
- §4.ハムスターの環境エンリッチメントを『地下型の巣箱』で解決しました。
- §5.ハムスターの環境エンリッチメントの大きな効果
- §6.呼べば巣穴から出て来るようになります。
§1.環境エンリッチメントとは?
簡略に言えば、動物がのびのびと健康に暮らせる環境で飼育してあげる、動物園の飼育方法の学問です。その動物の自然界の生活を正しく知って、その動物本来の行動ができる環境を整えて飼ってあげること。
北海道の旭山動物園のペンギンやシロクマやアザラシの飼い方に取り入れられている、一般にも広く知られるようになった動物の飼育環境の学問です。
民間では『市民ZOOネットワーク』という組織が動物園、水族館等動物の飼育及び展示を行う機関における環境エンリッチメントの取り組みを市民の側から支援すること、人間と動物をとりまく環境に対する社会全体の意識を高めることを目的とする活動を行っています。
以下は、『市民ZOOネットワーク』 のホームページの抜粋です。
みなさんは「環境エンリッチメント」という言葉をきいたことがありますか?
環境エンリッチメント(environmental enrichment)とは、「動物福祉の立場から、飼育動物の"幸福な暮らし"を実現するための具体的な方策」のことを指します。動物園での飼育環境は、動物たちが長年かけて適応してきた本来の生息地の環境と比較すると、どうしても、 狭く、単純で、変化が少ないものになりがちです。そこで、こうした飼育環境に工夫を加えて、環境(environmental)を豊かで充実(enrich)したものにしようという試みが環境エンリッチメントなのです。
ひと昔前は、ペンギンは小さな池のある狭い囲いの中で飼われていました。
ライオンもゾウも狭いおりの中で飼われていました。
今は、ペンギンが巨大な水槽の中を飛ぶように泳いでいます。
このペンギンたちは生き生きとして、自然界と同じように繁殖もするようになったということです。
これが『環境エンリッチメント』の考え方による飼育環境です。
§2.ハムスターにも環境エンリッチメント
小さな小さなハムスターの飼育にもこの『環境エンリッチメント』の考え方が当てはまります。しかも、ハムスターの自然界に於ける生活環境はほぼ解明されています
↑ハムスターの巣穴です。複数の部屋を作って上手に使い分けています。
上の写真のように、自然界のハムスターは地下に『寝室』と食べ物の『貯蔵室』と『トイレ室』を備えた家を作って、一匹だけで生活しています。
ハムスターは、一日の大部分をこの様な地下の巣穴の中で生活しています。
巣穴から地上に出てくるのは、食べ物や巣材の採取、縄張りのパトロール、そして交尾の時などで、地上の活動時間帯は夜行性ですから夜です。
§3.環境エンリッチメント以前の飼育環境の問題点
環境エンリッチメントの視点から、旧来の飼育環境を見てみると、重大な問題が浮かび上がります。●極端に狭い飼育環境
広大な広さの縄張りと活動域を持つハムスターですが、ペットとして飼われる環境、飼育ケースの広さはせいぜい40センチ×60センチ程度です。しかし、昨今はコンパクトな飼育ケースが流行っていますので益々狭くなる傾向にあります。
コンパクト化が進む飼育セットは、飼う人には都合が良いですが、ハムスターには大きなストレスになるはずです。
ただし、飼育ケースの狭さよりもはるかに重大な問題がありました。
●一日の生活の大半を過ごす巣穴、つまりハムスターの家の中の生活が考慮されていないことです
ハムスターが一日の大部分を地中の巣穴の家で生活している事実があるのに、このことが考慮されていません。環境エンリッチメントの視点から、飼育環境は、地上の環境よりも、ハムスター本来の地下の巣穴(家)の生活に着目してあげる必要があることが分かります。
人も一日のおよそ半分を家で過ごします。
仕事は外で、家ではくつろぎ睡眠をとります。家の生活があるから人は心身ともに健康で生きることが出来ます。
地下の巣穴の家の中で食事をして安眠・熟睡するハムスターも人と同じで、家が絶対に必要です。
環境エンリッチメントの視点でハムスターの野生の生活を見て明らかなことは、
①ハムスターの家は、寝室と、食べ物の貯蔵室と、トイレ室など(母ハムスターの場合は育児室も)の複数の部屋がある地下の巣穴である。
②ハムスターは一日の大部分をこの家の中で生活している。←人の家の生活と同じです。
③夜行性である。
メーカーの飼育セットにも、飼育書にもハムスターのための環境エンリッチメントの考え方が反映されていなかった。
旧来の飼育セットや飼育の考え方には、巣穴の家の中で生活するハムスターの環境がありませんでした。旧来の飼育セットのハムスターの家は、環境エンリッチメントの視点では『家』ではなく単なる『避難場所』になります。
§4.ハムスターの環境エンリッチメントを『地下型の巣箱』で解決しました。
ハムスターを環境エンリッチメントの考え方で飼育するときの環境は、ハムスターが一日の大半を過ごす家の中の生活に着目することが重要です。ハムスターが一日で最も長く居る場所が家であり、安全で安心出来る場所だからです。
前述の通り、人が家を必要とするのと全く同じ理由です。
ハムスターが自然界の家の中と同じように行動できる『家』を用意してあげることで解決しました。
家の条件は、
①【地上の環境】つまり飼育セットの床に、巣穴が家の入口になる巣穴があること。自然界の巣穴をハムスターにイメージさせることが出来ます。
↑セット全景です。
セットの底に巣穴が開いています。
セットの下に家『地下型の巣箱』があります。
②巣穴の先に通路があること
③通路の先に3室以上の部屋があること
です。
↑これがハムスターの家です。
巣穴の先に通路があって、通路の祖気に複数の部屋があります。
§5.ハムスターの環境エンリッチメントの大きな効果
↑ ※この写真は人の手を加えていない、ハムスターの家作りの行動そのままです。
ハムスターは自分でこのように、部屋を見事に使い分けて健康にのびのびと生活します。
●まず、ストレス行動が無くなりました。
●そして、健康に生活するようになりました。
●呼べば、巣穴から出てくるようになり、楽しくコミュニケーションがとれるようになりました。
●もちろんのことですが、血が出るほど噛みつくなどということが無くなります。
効果の考察 ストレス行動が消えて心に余裕が出来ます
自分の家を持ちたいという欲求が満たされて、食べ物の心配がなくなって、環境に脅威(キツネなど)がないことが分かったハム君は、平和を満喫することが出来ます。このように心に余裕ができると潜在していた好奇心が自然に湧き出てきます。
この時のハム君は家(巣穴)の外で起きていることにこの好奇心を向けています。
飼い主の声や、飼い主が出す音に、家の中から好奇心を向けているのがこの時です。
この好奇心をコミュニケーションに結び付けてあげると、仲良くなることが出来て、ハムスター飼育の極上の楽しみになります。
例えばですが、、ヒマワリの種の袋をガサガサさせるだけで巣穴から飛び出してくるようになるのは、ガサガサとヒマワリの種がもらえることを学習したからです。
§6.呼べば巣穴から出て来るようになります。
呼べば出てくるようになるのは、呼ばれることとオヤツのかかわりを学習するからですし、信頼関係ができてコミュニケーションを求めているからです。嫌なら出てこなくても良い環境がもらえているのに、出てくるのが何よりの証です。
この様に、良い環境でストレスのない状態で飼ってあげれば、ハムスターは持ち前の賢さを私たちに見せてくれます。 ハムスターとの楽しい世界にようこそです。
ハムスターと仲良くなル方法はこちらです。